会社が倒産したら消費税はどうなる?法人破産後の税金・納税義務を解説
会社の経営状況が悪化すると、取引先への支払いや従業員の給与、金融機関への返済などに加えて、消費税の納付が資金繰りを圧迫することがあります。
「会社が赤字なら消費税も支払わなくてよいのではないか」「消費税を滞納したまま倒産すると税金はどうなるのか」と疑問を持つ経営者もいるでしょう。
しかし、消費税は会社の利益に対して課税される税金ではないため、赤字でも納税義務が生じるケースがあります。また、消費税を払えなくなったからといって、直ちに会社を倒産させなければならないわけではありません。状況によっては税務署に相談し、納税の猶予などを受けられる可能性もあります。
一方、経営状態がさらに悪化して法人破産に至った場合には、滞納している消費税や法人税等は破産手続の中で処理されます。
この記事では、赤字でも消費税を支払う必要がある理由から、滞納時の対応、法人破産後の税金、代表者個人への影響、破産管財人による消費税の申告まで、倒産と消費税の関係を流れに沿って解説します。
会社が倒産しても消費税は支払う?赤字でも納税義務があるケース
会社が赤字であっても、消費税の納税義務がなくなるとは限りません。
法人税は基本的に法人の所得を基準として計算されますが、消費税は商品の販売やサービスの提供等の取引に対して課税される税金だからです。
そのため、まずは「赤字」と「消費税の納税義務」は別の問題であることを理解しておく必要があります。
赤字でも消費税の支払いが必要になる理由
消費税の納付税額は、原則として売上げに係る消費税額から、仕入れ等に係る消費税額を控除して計算します。
一方、会社が赤字か黒字かは、売上から仕入代金、人件費、家賃、減価償却費などの費用を差し引いて判断します。
両者は計算方法が異なるため、決算上は赤字でも消費税の支払いが必要になるケースがあります。
たとえば、従業員に支払う給与は会社にとって大きな費用ですが、原則として消費税の課税仕入れには該当しません。人件費負担が大きい企業では、利益が出ていなくても消費税の納付額が発生することがあります。
資金繰りが悪化した会社では、売上代金として受け取った金銭を給与や取引先への支払いなどの運転資金に使用し、納付期限になった時点で消費税を支払う資金が残っていないこともあります。
しかし、経営が赤字であることだけを理由に納税義務が消滅するわけではありません。将来の納税額を見込み、可能な限り納税資金を別に管理しておくことが重要です。
売上1,000万円以下でも消費税を納めるケース
原則として、基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者は消費税の納税義務が免除されます。法人の場合、基準期間は原則として前々事業年度です。
したがって、「今年の売上が1,000万円を超えたから、直ちに今年の消費税を納めなければならない」「今年の売上が1,000万円以下だから必ず免税になる」と判断するのは正確ではありません。
また、基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも、特定期間の課税売上高等が1,000万円を超える場合には、課税事業者となることがあります。
さらに、インボイス制度における適格請求書発行事業者の登録を受けている事業者は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも原則として消費税の申告・納税が必要です。
会社の売上だけを見て判断せず、自社が課税事業者に該当するか分からない場合には税理士や税務署に確認しましょう。
倒産前に消費税を払えない場合はどうする?滞納時の対応方法
消費税の納付期限が迫っているにもかかわらず資金がない場合、最も避けたいのが何も対応せず滞納を放置することです。
滞納が続けば延滞税が発生するだけでなく、会社の財産に対して滞納処分を受け、資金繰りがさらに悪化する可能性があります。
まず税務署に相談して納税の猶予・分納を検討する
期限までに消費税を納付することが困難な場合には、早めに税務署へ相談しましょう。
国税には「納税の猶予」や「換価の猶予」という制度があります。一定の要件が認められれば、原則として1年以内の期間、納税や財産の換価について猶予を受けられる可能性があります。
猶予が認められると、差押えや換価が猶予されるほか、猶予期間中の延滞税の全部または一部が免除される場合があります。また、会社の財産や収支の状況等を踏まえ、猶予期間中に分割して納付することもあります。
ただし、単に「経営が苦しい」というだけで必ず猶予が認められるわけではありません。それぞれの制度には要件や申請期限があるため、支払えなくなることが分かった時点で相談することが大切です。
消費税を滞納すると延滞税や滞納処分を受ける可能性がある
納期限までに消費税を納付しなければ、原則として納期限の翌日から延滞税が発生します。
さらに滞納を続ければ、税務署による財産調査が行われ、預金、売掛金、不動産などの財産を差し押さえられる可能性があります。
特に事業用口座や売掛金の差押えを受けると、従業員への給与や取引先への支払いができなくなり、それまで継続できていた事業まで急速に悪化するおそれがあります。
一方、税金を支払うためだけに高金利の融資を受けたり、新たな借入れを繰り返したりすることにも注意が必要です。税金だけでなく、金融機関への返済や取引先への支払いも難しくなっている場合には、会社の債務全体を確認し、事業継続が可能なのかを検討する必要があります。
既に支払不能に近い状況であれば、税務署への相談と並行して、法人の債務整理を扱う弁護士への相談も検討しましょう。
会社が倒産・法人破産すると滞納した消費税や税金はどうなる?
会社が支払不能や債務超過等の状態となり、裁判所に法人破産を申し立てる場合、消費税や法人税、社会保険料、金融機関からの借入金、取引先への買掛金なども含めて破産手続の中で処理されます。
ただし、税金に関する債権は、一般の取引先や金融機関が有する債権と同じ順位で取り扱われるとは限りません。
滞納した消費税などの税金は法人破産で免責される?
ここで重要なのが、法人破産と個人の自己破産との違いです。
個人の自己破産では、裁判所から免責許可を受けることによって一定の債務について支払責任を免れます。しかし、租税等の請求権は破産法第253条第1項第1号により非免責債権とされているため、自己破産をしても原則として税金の支払義務は残ります。
これに対して、法人破産には個人と同じ意味での免責手続はありません。破産手続が終了して法人格が消滅し、支払主体である法人そのものがなくなれば、回収できなかった法人の債務についてその後法人に請求することはできなくなります。
ただし、破産手続中の税金には優先順位があります。
破産法第148条第1項第3号では、破産手続開始前の原因に基づいて生じた租税等の請求権のうち、破産手続開始時に納期限が到来していないものや、原則として納期限から1年を経過していないものなどを財団債権としています。
財団債権は一般の破産債権とは異なり、破産手続によらず破産財団から随時弁済されます。また、財団債権に該当しない租税債権でも、優先的破産債権として一般の破産債権より優先して配当を受けるものがあります。
したがって、「法人破産すれば消費税が免責される」と単純に理解するのではなく、破産手続中は税金の種類や納期限等によって法律上の優先順位に従って処理され、最終的に法人格が消滅するという流れで理解することが重要です。
会社の税金を代表者個人が支払う必要はある?
株式会社などでは、法人と代表者個人は別の法的主体です。そのため、会社が消費税や法人税を滞納しているという理由だけで、代表者個人が当然に会社の税金を支払う義務を負うわけではありません。
ただし、例外があります。
たとえば、代表者などが会社の税金について納税保証をしている場合には、会社が支払えなくなった後に保証人へ請求される可能性があります。
また、国税徴収法では一定の場合に「第二次納税義務」が定められています。合名会社・合資会社の無限責任社員などは、一定の要件のもとで法人の税金について第二次納税義務を負う場合があります。
さらに、法人の解散に際し、税金を納付しないまま残余財産を分配し、法人に対して滞納処分を行っても徴収不足となる場合には、一定の範囲で清算人や残余財産の分配を受けた者が第二次納税義務を負うことがあります。
このほか、滞納者が財産を無償または著しく低い額で譲渡するなど一定の行為を行った場合には、その利益を受けた者に第二次納税義務が生じるケースもあります。
「倒産する前に会社の財産を代表者や家族へ移しておけばよい」といった対応は避けなければなりません。
なお、代表者が金融機関からの借入れについて個人保証している場合には、会社の税金とは別に保証債務の支払責任を負います。その結果、法人破産と代表者個人の自己破産その他の債務整理を同時に検討する必要が生じることもあります。
法人破産後も消費税の申告は必要?破産管財人と納税義務の関係
法人について破産手続開始決定が出ても、その瞬間に法人格が消滅するわけではありません。
破産法第35条では、破産した法人は、破産手続による清算の目的の範囲内で、破産手続が終了するまで存続するものとされています。
したがって、法人破産を申し立てれば、その後は税金の申告を一切しなくてよいと考えるのは適切ではありません。
法人破産後の消費税・法人税の申告と納税
破産手続が開始されると、裁判所が破産管財人を選任します。
破産管財人は、破産財団に属する会社の財産を管理し、売掛金等の債権を回収したり、不動産や在庫、機械設備などを換価・処分したりしたうえで、法律で定められた順位に従って債権者への弁済・配当を行います。
その過程では、法人税や消費税などについて税務上必要な申告への対応が生じることがあります。
また、「もう倒産するのだから」と破産申立て前の確定申告を意図的に行わないことも避けるべきです。どの申告が必要となるかは、会社の事業年度、破産手続開始の時期、事業を停止した時期、財産の処分状況などによって異なります。
決算書や総勘定元帳、過去の法人税・消費税の申告書などの資料は、破産手続やその後の税務処理でも重要となります。経営が悪化している中でも、可能な限り会計・税務関係の資料を整理しておきましょう。
破産管財人が財産を換価・処分した場合の消費税
倒産と消費税の関係で特に注意したいのが、破産管財人による財産処分です。
破産手続中であっても、破産法人は清算の目的の範囲内で存続しており、破産財団も法人に帰属しています。
そのため、破産管財人が破産財団に属する課税資産を処分した場合、その譲渡に係る消費税の納税義務者は破産管財人個人ではなく破産法人です。
そして、破産法人の基準期間における課税売上高等によって消費税の納税義務を判定し、実際の履行手続は破産管財人が行います。
つまり、会社が事業を停止して破産手続中だからといって、消費税の問題が完全になくなるわけではありません。破産財団に不動産、在庫、設備その他の課税資産が残っているケースでは、破産後の財産処分と消費税の関係についても確認する必要があります。
消費税を払えず倒産・法人破産を検討するなら早めに弁護士へ相談しよう
消費税を支払えないという状況は、会社の資金繰りが悪化していることを示す重要なサインの一つです。
消費税だけでなく、従業員への給与、社会保険料、取引先への支払い、金融機関への返済まで困難になっている場合には、対応を先延ばしにしないことが重要です。
消費税の滞納が会社の資金繰りを悪化させる前に相談する
早い段階であれば、税務署への相談による納税の猶予、事業の立て直し、金融機関との調整など、破産以外の方法を検討できる可能性があります。
一方、預金や売掛金について滞納処分を受け、手元の金がほとんどなくなった後では、選択肢が狭くなる可能性があります。
特に注意したいのが、法人破産そのものにも費用が必要になることです。裁判所へ納める予納金や弁護士費用等を準備できなくなるほど財産を使い切ってしまうと、破産手続を進めること自体が難しくなる場合があります。
また、倒産を意識した後に特定の債権者だけへ支払いをしたり、会社の財産を代表者や関係者へ移転したりすると、後の破産手続で問題になる可能性があります。
「税金だけは先に払った方がよいのか」「取引先への支払いを続けてもよいのか」などを自己判断せず、破産を具体的に検討する段階になったら早めに弁護士へ相談しましょう。
税務署・税理士・弁護士の役割の違い
消費税を払えない場合には、抱えている問題によって適切な相談先が異なります。
納税の猶予や納付方法など、税金の徴収に関する相談先は税務署です。消費税・法人税の計算や申告など、税務処理については税理士への相談が適しています。
これに対して、税金だけでなく金融機関や取引先への債務も支払えず、事業の継続が困難となり、法人破産などの法的な債務整理を検討する場合には弁護士への相談が必要になります。
消費税を滞納しているからといって、必ず会社を倒産させなければならないわけではありません。しかし、問題を先送りすると延滞税や滞納処分によって資金繰りがさらに悪化し、選択できる解決方法が少なくなる可能性があります。
会社の財産、債務、資金繰り、税金の滞納状況などを整理したうえで、税務署、税理士、弁護士等の専門家によるサポートを受け、事業を継続するのか、法人破産を含む手続を行うのかを早めに検討しましょう。
倒産・消費税についてよくある質問
Q.会社が赤字でも消費税は払う必要がありますか?
はい。赤字だからという理由だけで消費税の納税義務がなくなるわけではありません。消費税と法人税では計算の仕組みが異なるため、会社の決算が赤字でも消費税が発生するケースがあります。
Q.消費税を払えない場合はすぐ法人破産する必要がありますか?
必ずしも法人破産が必要とは限りません。一定の要件を満たせば、納税の猶予や換価の猶予を受けられる可能性があります。まず税務署に相談し、会社全体の債務の支払いが困難な場合には弁護士への相談も検討しましょう。
Q.法人破産すると滞納していた消費税はどうなりますか?
破産手続中は、一定の租税債権が財団債権や優先的破産債権として取り扱われます。最終的に破産手続が終了して法人格が消滅すれば、法人自体がなくなるため、回収できなかった税金を消滅した法人に請求することはできなくなります。
Q.会社の消費税を社長個人が払う必要がありますか?
株式会社の会社債務と代表者個人の債務は原則として別です。そのため、会社が税金を滞納しただけで代表者が当然に支払義務を負うわけではありません。ただし、納税保証をしている場合や第二次納税義務を負う場合などは例外です。
Q.法人破産した後も消費税の申告が必要になることはありますか?
あります。破産手続中も法人は清算の目的の範囲内で存続します。破産管財人が破産財団に属する課税資産を処分した場合などには消費税の問題が生じ、必要な履行手続を破産管財人が行います。


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