奨学金の滞納をされている方へ
日本学生支援機構が公表している、令和2年度の貸与型奨学金利用者数は、712,841人にものぼります。
奨学金制度は、意欲ある学生が経済的な理由によって進学を諦めることなく学業を続けられるように援助するものです。
「学業のためのお金」というと聞こえは良いのですが、実際は借金であり、返済義務があります。
家庭の経済事情によって奨学金を借りて進学した方にとって、奨学金は大きな助けとなったでしょう。
しかし一方で、卒業後に奨学金が返済できずに滞納される方もおられます。
奨学金の滞納を解決するために債務整理を検討された場合、厄介なのが「連帯保証人」の問題です。
奨学金の連帯保証人には、多くの場合両親や親戚などがなっています。
奨学金を借りた本人が返済できず滞納し続けたり、自己破産など債務整理を選択したりした場合、その連帯保証人に請求が回ります。
そのため、「連帯保証人に迷惑をかけずに問題解決したいのですが、どうすれば良いですか?」と相談に来られる方も多いのです。
この記事では、奨学金の滞納でお悩みの方向けに
・奨学金を滞納するとどうなるのか
・どのようなトラブル解決方法があるか
について説明します。
奨学金を3ヶ月滞納すると信用情報に記録が残る
奨学金を3ヶ月連続で滞納すると、信用情報に記録が残ります。
信用情報とは、クレジットカードやローンの契約、申し込みに関する情報のことです。
信用情報に記録が残る=傷が残ることを、よく「ブラックリストに乗る」と表現することがあります。こちらの方がイメージが湧きやすいのではないでしょうか。
信用情報は複数の金融機関などが共通で確認しているので、一度傷がついてしまうと、新しくクレジットカードを作ったり、ローンを組んだりするのが難しくなります。
例えば、奨学金滞納の信用情報記録が残っている方が住宅ローンを組もうとした場合、審査するローン会社は過去の信用情報を参考にして
「この人は過去に奨学金を滞納しているのか。それならこの住宅ローンの支払いも滞納されてしまうかもしれない」
と考えるのです。よって、結果的に審査に通りづらくなります。
信用情報に傷がつくことによって起こり得るデメリットとしては、
・住宅ローンやカーローンなど、新しいローンの審査が通りづらくなる
・新しいクレジットカードを作りづらくなる
・今持っているクレジットカードの更新ができない恐れがある
・スマホの本体料金を分割で支払いできなくなる恐れがある
などが考えられます。
奨学金の場合、3ヶ月連続して返済が出来なかったときに、信用情報に記録が残ります。
具体的に見てみましょう。
貸与型の奨学金の返済日は毎月27日ですので、それを基準に考えます。
4月27日 未払い
5月27日 未払い(滞納期間1ヶ月)
6月27日 未払い(滞納期間2ヶ月)
7月27日 未払い(滞納期間3ヶ月)
このように、4月から未払い状態が続いたのであれば、3ヶ月後の7月の返済日まで未払いだった場合、以降の信用情報に傷がつく可能性が高いです。
6月27日の時点で、3回支払日を無視しているのだからその時点で傷がつくのでは?と思うかもしれません。
6月の時点では確かに3回支払日を無視していますが、滞納期間はまだ2ヶ月しか経っていません。
よって、信用情報に記録が残ることはありません。
また、6月の支払日に一度返済をした場合も、3ヶ月連続でなくなるため、記録は残りません。
ご自身の信用情報を傷つけないためにも、3ヶ月連続で滞納する前に解決に向けて動く必要があります。
奨学金を滞納したときの解決策
万が一奨学金を滞納してしまったときは、早めに対策しなければなりません。どうにもならずに放置しているとご自身の信用情報に傷がつきますし、延滞金が発生してどんどん返済額が膨らんでいきます。
奨学金を滞納した時にまずすべきなのが、借入先(日本学生支援機構等)に相談をすることです。
支払いできなくなった原因が災害や病気、経済的な理由等であれば、相談することで猶予制度や奨学金の減免が認められる可能性があります。
ただし、いずれの制度を利用する場合でも「早めの相談」が鍵になってきます。何ヶ月も滞納が続いた状態だと、信用情報が傷つくことは勿論、猶予制度や月々の返済額の調整などの相談にも乗ってもらえなくなります。
早い段階で相談すれば、様々な選択肢を提示してもらえます。返済に関する相談は気が重く、後回しにしたくなる気持ちは分かりますが、後にトラブルを肥大化させないためにも早めに相談しましょう。
猶予制度などを使っても返済が厳しい、あるいは放置をしすぎて相談に乗ってもらえなかった場合は、債務整理などを検討しましょう。
猶予制度を利用する
多くの貸与型奨学金では、返済期限の猶予制度が設けられています。
この制度を使えば、一定期間返済期限を延長できます。
ただし、返済すべき元金や利子が減額されたり免除されたりするわけではありません。
猶予期間が過ぎた時点で返済が再開し、それに応じて返済終了日も延期されます。
日本学生機構は、この制度は、災害、傷病、経済困難、失業などの返済困難な事情が生じた場合に利用できると公表しています。
減額返還制度を利用する
減額返還制度とは、毎月の返済額を減額して返済する制度のことです。
月々の返済額が減りますが、元金や利子が減るわけではありません。その分返済期間が延期されます。
この制度は、災害、傷病、その他経済的な理由により奨学金の返済が困難な方の中で、当初決められていた月々の返済額を減額すれば、返済が可能な方を対象としています。
1回申し出れば、適用期間は12ヶ月で最長15年(180ヶ月)まで延長できます。
ただし、減額返還制度は、延滞すると審査ができなくなります。延滞する前に相談、申し出をしなくてはなりません。
返済免除となる場合
特別な事情がある場合は、奨学金の返済が免除されることもあります。
例えば、日本学生支援機構が定める返還免除の条件は、
死亡又は精神もしくは身体の障害により返還ができなくなったとき
だとしています。
この制度を活用されたい場合は、必要書類を提出する必要がありますが、そのなかには
・返済ができなくなったことを証明する書類(収入に関する証明書等)
・医師または歯科医師の診断書
などが含まれます。
債務整理をする
上記の制度を利用しても返済が難しいのであれば、債務整理を検討する必要があります。
債務整理をすれば、利息をカットしてもらったり、元金を減額してもらったり、支払いそのものが免除となったりします。
債務整理にはいくつか手法があり、主に
・任意整理
・個人再生
・自己破産
があります。
しかし、債務整理をすると信用情報に記録が残るため、滞納したときと同じデメリットが生じる点には注意しなければなりません。
また、債務整理をする場合は、弁護士など法律や交渉の専門家に依頼をすることをおすすめします。
複雑な手続きを全て専門家に任せられる他、窓口が弁護士が所属する事務所になるので債権者からの督促がストップします。
債務整理の3つの手法
債務整理には主に3つの手法がありますが、それぞれ特徴が異なります。
具体的な特徴については下記をご覧ください。
個人再生 | 自己破産 | 任意整理 | |
減額 | 原則1/5に減額(借入額によって異なる) | 全て無くなる | 利息と過払い金分の減額 |
手続き期間 | 6~12ヶ月程度 | 4~12ヶ月程度 | 1~3ヶ月程度 |
会社 | 知られる可能性低 | 知られる可能性低 | ほとんど知られない |
家族 | 知られる可能性有 | 知られる可能性有 | ほとんど知られない |
職業の制限 | なし | 手続き期間は一部制限有 | なし |
任意整理
任意整理は、利息や過払い金分の減額を債権者に交渉する手続きです。
毎月の返済額を減らせるので、生活に支障のない範囲で支払うことができるようになります。
個人再生や自己破産は、裁判所を挟む手続きですが、任意整理は債権者と直接やり取りします。
減額の幅が小さいデメリットはありますが、手続きにかかる期間が短い上に、会社や家族など周囲の人間に手続きの事実が知られるリスクが低いのがメリットです。
個人再生
個人再生は、裁判所を通して行う手続きです。借金が返済困難であると裁判所に認めてもらい、減額された借金の残りを3~5年かけて分割で支払っていく手続きです。
原則、借金は1/5にまで減額されます(ただし、借り入れている額によって減額量は異なります)。
また、個人再生であれば、住宅ローン特則と呼ばれるものが利用できます。
住宅ローン特則とは、住宅ローンはこれまで通り支払い続けながら、それ以外の借金の減額・分割をするというものです。
自己破産であれば、住宅を手放さなければならない可能性が高いですが、
個人再生であれば自宅を残したまま債務整理が可能なのです。
自己破産
自己破産は、借金を返済する財産を持っていないことを裁判所に認めてもらい、借金を帳消しにする手続きのことです。
住宅や車などの財産にあたるものは手放さなければならないデメリットはありますが、借金の返済義務が免除されます。
また、破産したからといって戸籍や住民票にその事実が記載されたり、破産を理由に会社を解雇されたりすることはありません。
奨学金の滞納で破産した場合、連帯保証人に債務が移る
奨学金が返済できずに破産する場合、注意しなくてはならないのが連帯保証人の存在です。
多くの方の場合、奨学金を受ける際に両親や親族等が連帯保証人あるいは保証人になっています。
連帯保証人や保証人がいる状態で、奨学金を借り入れた本人が破産した場合、
本人の返済義務はなくなりますが、その代わり連帯保証人や保証人に返済義務が移ります。
本人が自己破産手続きをすると、連帯保証人や保証人のもとに返済の義務が移り、一括返済をするよう求められます。
連帯保証人/保証人が返済することが難しければ、その人達も本人と同様に債務整理をしなければなりません。
実際、奨学金を借りたご本人であるお子さんと、そのお父様が同時に債務整理をなさった事例もあります。
本人や連帯保証人/保証人の負担を減らすためには、債務に関する問題に詳しい専門家にご相談されることをおすすめします。
奨学金の返済に困っている方の多くは、奨学金以外にも借り入れたお金があって返済に追われているケースが多いので、その方のご事情に適した債務整理が必要です。
奨学金の滞納でお悩みなら弊所へご相談を
日本学生支援機構など、奨学金の借り入れ先に相談したが、猶予制度などを利用できないと言われた、あるいは制度を利用しても返済が厳しい、といったお悩みをお持ちであれば、弊所へご相談ください。
弊所では、債務整理を数多く取り扱ってきており、年間200件以上の借金問題に取り組んでおります。
弊所のご依頼者様のなかには、奨学金の返済やその他の借り入れの返済に追われてどうしようもない状況だった方も多数おられます。
家族が奨学金の連帯保証人になっていて、どうすべきかわからないと相談に来られた方もおられます。
債務整理に関するご相談は、初回無料でお受けいたします。
どうぞお気軽にご連絡ください。