NO.178 個人再生と破産申立2
<事案>
収入状況では個人再生(注1)が可能と思えたが,本人の希望と病気療養による休職の可能性から破産申立(同時廃止事件,注2)をした事案。
<解決に至るまで>
債権者数 7社
残債務額 420万円
資産 特になし
収入状況 本人月額給与25万円,支出(生活費)15万円,余剰10万円
<最終的な結果>
休職及び就職活動中の生活費のための借入が増えて,支払が困難になったため来所されました。ご本人は,他の事務所に債務整理の相談をしましたが,意思に反して個人再生を勧められて,法律事務所に不信感を持っておられました。確かに,ご本人の収入と支出だけを見ると,個人再生による解決も可能でした。しかし,本人は病気療養中で勤務の継続に自信なさげであり,また職歴を見ても1年程度での転職を繰り返しているため,履行可能性(注3)に問題がありました。収入状況確認と個人再生手続の返済額を説明し,個人再生と破産のメリットとデメリットを説明して,本人に理解いただいた上で破産申立(同時廃止事件)を選択しました。
申立書において個人再生の履行可能性について裁判所にていねいに説明したところ,免責については問題がなかったこともあり,無事免責決定がされました。
<担当者から>
本人の意思を無視して,収入と支出で機械的に手続を選択する事務所もあるようですが,本当の意味での解決にはならないと思います。
【用語説明】
(注1)個人再生(小規模個人再生,民事再生法第13章以下)
消費者金融やクレジットの総債務額を減額した最低弁済額を原則3年で分割弁済することで,消費者金融やクレジット残額の免除を受ける手続。なお,最低弁済額は原則,①100万円,②債務額の5分の1,③清算価値分(=財産の総額),以上の①~③のいずれか高い金額となる。
(注2)同時廃止事件 (破産法216条1項) 通称「同廃事件」
破産者の財産が少なく,破産手続の費用の捻出ができない場合に,破産開始決定と同時に破産手続を終わらせる決定をする手続。上記引継予納金は不要であるが,裁判所の書面審査のため,原則申立時に必要資料をすべて提出し,事細かに報告する必要がある。
(注3)履行可能性
個人再生手続で,弁済計画に基づく返済が継続できる可能性のこと。個人再生手続では最も重視されるポイント。
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