NO.201 クレジット枠の現金化と免責
<事案>
消費者金融とクレジットカードの借入が主だが,約230万円分のクレジット枠の現金化(注1)をしており,免責(注2)に問題があったため,破産管財事件(注3)として申立をした事案。
<解決に至るまで>
債権者数 12社
残債務額 約1500万円
クレジット枠の現金化 230万円
財産 預金30万円
<最終的な結果>
ご本人は,借入ができなくなって,やむなくクレジット枠の現金化をしたようです。しかし,クレジット枠の現金化は違法行為であり,免責不許可事由(注4)の「支払不能後の処分行為」と「詐術による信用取引」にあたります。そこで,免責観察型(注5)の破産管財事件として申立を行いました。
破産管財人(注6)から非常に厳しい意見と指摘を受け,クレジットカード会社からは現金化につき免責意見(注7)が出ました。さらに,破産管財人からも免責不許可の意見が出ました。
万事休すにも思えますが,申立代理人(当方)からも意見書を提出する機会はあります。その意見書の中で,ご本人は過去を反省していること,生活の再建を切に望んでいること,裁判所や破産管財人からの質問や資料提出要請に対しても隠し事をすることなく真摯に対応していること,以上から裁量免責(注8)の余地がある旨の主張をしました。
本人からの反省文提出,破産管財人による家計の観察などを経て,申立から約1年が経過しましたが,最終的には裁量免責がされました。
<担当者から>
クレジット枠の現金化は違法行為です。やめましょう。
【用語説明】
(注1)クレジット枠の現金化
あらかじめ買取業者の指示にそって,クレジットカードで商品を購入し,買取業者に商品を売却して現金を得る違法行為。破産手続では免責不許可事由となり,また,詐欺罪の成立もありうる。
(注2)免責 (破産法248条以下)
破産開始決定時に存在する借入金などの債務につき,支払義務を免れる手続き。
個人の破産者は,免責不許可事由(破産法252条)がないか,あっても裁量免責相当とならば免責決定を受ける。
(注3)破産管財事件 (破産法31条1項) 通称「管財事件」
破産管財人が選任され破産者の財産をお金に換え債権者に配当するお金を確保する手続。
大阪地方裁判所の場合,破産管財人への引継予納金として20万5000円の納付が必要となる。
(注4)免責不許可事由(破産法252条)
破産手続で免責が認められないとされる事由。
支払不能後の処分行為,浪費,ギャンブル,詐術による信用取引,財産関係資料の隠匿・破棄,虚偽の債権者一覧表の提出,裁判所・破産管財人に対する説明義務違反などがある。
(注5)免責観察型
免責不許可事由があり,免責不許可の可能性が高い場合,裁量免責のため,破産管財人による調査,指導監督を受ける手続き。
(注6)破産管財人
破産手続で,破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利を有する人(破産法2条12項)。管轄裁判所が破産管財人名簿に登録された弁護士から選任する。
(注7)免責意見 (破産法251条)
破産者の免責につき意見がある債権者が,裁判所に出す意見。意見は,感情的なものでは足りず,破産者の行為が免責不許可事由にあたるとの主張が必要。また,破産管財人も意見書を提出する。
(注8)裁量免責
免責不許可事由が存在する場合,裁判所は,経緯その他一切の事情を考慮して,相当と認めるときは裁量で免責を許可することができる(破産法252条2項)。
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