NO.39 不動産任意売却後の残債務と破産

<事案>

自宅を売却も多額のローンが残ったため、破産申立をした事案。

 

 

<解決に至るまで>

債権者数    2社

残債務額    約2,000万円(住宅ローン残債務を含む)

財産      特になし

 

 

<最終的な結果>

Aさんは、住宅ローンの支払が滞ったため、住宅ローン保証会社による代位弁済(注1)がされ、返済の目処が立たなくなったので、自宅の任意売却(注2)をしました。しかし、約1,700万円の債務が残ったため、破産申立をすることにしました。

破産開始決定前の財産処分は、破産管財人の否認権行使(注3)の対象になりえます。そこで、任意売却につき適正価格での売却であること、売買代金の使途について詳細に報告することで、同時廃止事件(注4)で問題なく進み、無事免責決定がされました。

 

 

【用語説明】

(注1)「保証会社による代位弁済」

住宅ローンの保証会社が、債務者に代わって銀行に弁済すること。

代位弁済までのスケジュールは、各保証会社により異なるが、ある大手銀行の保証会社のスケジュールは次のとおりである(延滞回数は連続ではなく通算)。

延滞5回目 内容証明郵便で督促状が届く

延滞6回目 期限の利益を喪失(=分割弁済できなくなる)、銀行預金口座が凍結される

延滞7回目 保証会社の代位弁済、以降は遅延損害金が加算される

(注2)「任意売却」  略称:「任売」(にんばい)

担保権がついた不動産につき、法的手続き(=競売)ではなく、担保権者との任意交渉で担保抹消同意を得て売却する手続。①任意交渉であるので所有者側に主導権がある、②競売より高額で売却できることが多く売却後の残債務を少なくすることができる、③引越費用を売却代金から取ることができる、などのメリットがある。

(注3)「否認権」

破産管財人が、破産手続開始前にされた破産者または第三者の行為の効力を否定して破産財団の回復を図ること。破産債権者を害する行為(破産法160条)や対価を隠匿するための処分行為(同161条)などが対象となる。

(注4)同時廃止事件(破産法216条1項) 通称「同廃事件」

破産者の財産が少なく、破産手続の費用の捻出ができない場合に、破産開始決定と同時に破産手続を終わらせる決定をする手続。裁判所の書面審査のため、原則申立時に必要資料をすべて提出し、事細かに報告する必要がある。

 

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