NO.171 破産申立と自由財産
<事案>
自宅を所有し,預金と保険解約返戻金があるので破産管財事件(注1)で申立をして,自由財産拡張申立(注2)をした事案。
<解決に至るまで>
債権者数 10社
残債務額 約1730万円
財産 自由財産拡張財産:預金45万円,保険解約返戻金45万円
<最終的な結果>
所有している自宅がオーバーローンでない不動産(注3)で,預金と保険解約返戻金の合計が90万円ほどあったので,破産管財事件として申立をして,自由財産拡張申立をすることにしました。
自由財産拡張につき,破産管財人は問題なく認めました。自宅については,破産管財人が任意売却(注4)を試みたようですが,担保権者の同意が得られなかったため,第2回債権者集会で破産財団から自宅を放棄し,破産事件は終了して免責決定がされました。
<担当者から>
任意売却は,担保権者の売却希望価格が高いほど難しくなります。本件では担保権者が強気の価格設定をしていたのかもしれません。
【用語説明】
(注1)破産管財事件 (破産法31条1項) 通称「管財事件」
破産管財人が選任され破産者の財産をお金に換え債権者に配当するお金を確保する手続。
法人代表者の場合,必ず破産管財事件となる。大阪地方裁判所の場合,破産管財人への引継予納金として20万5000円の納付が必要となる。
(注2)自由財産拡張
個人破産の場合に,破産者の経済的再生のため,破産財団に属しない財産の範囲を拡張する手続。一般的に拡張が認められるのは,預金,保険,退職金,自動車,敷金。拡張が認められると,破産管財人に処分されず,破産者の財産として保護される。
(注3)オーバーローンでない不動産
不動産価値が担保債務額より大きい不動産(不動産価値>担保債務額)のこと。両者の差額が資産となる。
(参考:オーバーローン不動産)
下記①または②にあたる場合は,「オーバーローン不動産」として価値なしとする。したがって,財産がオーバーローン不動産のみの場合は,同時廃止事件として申立をすることができる。
①担保付不動産の被担保債権額の残高が固定資産税評価額の2倍を超える
②上記①の割合が1.5~2.0の間の場合は,被担保債権額の残高が不動産業者の査定額の1.5賠を超える
(注4)任意売却 略称:「任売」(にんばい)
担保権が付いた不動産につき,法的手続(=競売)ではなく,担保権者との任意交渉で担保抹消同意を得て売却する手続。①任意交渉であるので所有者側に主導権がある,②競売より高額で売却できることが多く売却後の残債務を少なくすることができる,③引越費用を売却代金から取ることができる,などのメリットがある。
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