NO.258 債務整理 ⇒ 代表者の不動産売却と破産申立

<事案>

 オーバーローン不動産(注1)でない代表者名義の収益物件のある破産申立事案。

<解決に至るまで>

債権者数   15社

残債務額   約5300万円(収益物件ローン残債務を含む)

財産     オーバーローン不動産でない収益物件(マンション)        マンション固定資産評価額:800万円 ローン残額:1000万円

<最終的な結果>

 Aさんは,代表者を務めていた会社の売上が減少したので,会社と共に破産申立をすることにしました。収益マンション以外には特に財産はないため,任意売却(注2)をすることを検討しました。

 しかし,マンションには賃借人が居住しており,短期間で売却すれば安値での処分となり,破産管財人の否認権行使(注3)の対象になりかねません。そこで,賃借人に事情説明後,売却せずに破産申立をして破産管財人に引き継ぎ,破産管財人に任意売却を任せました。

 収益マンションは思ったよりも高値で売れたようで,破産手続は債権者に配当後,問題なく終了し,無事免責決定がされました。

<担当者から>

 本件は,任意売却をせずに破産管財人に任意売却を任せた案件ですが,不動産の任意売却は,物件や事案により進行が全く異なります。不動産売却の知識だけでなく,破産手続も周知している必要がありますので,経験豊富な事務所に相談されることをお勧めします。

【用語解説】

(注1)オーバーローン不動産

 住宅ローン残債務が不動産価値を大きく上回っている状態にある不動産のこと。不動産が,下記①または②にあたる場合は,「オーバーローン不動産」として価値なしとする。

 ①担保付不動産の被担保債権額の残高が固定資産税評価額の2倍を超える

 ②上記①の割合が1.5~2.0の間の場合は,被担保債権額の残高が不動産業者の査定額の1.5賠を超える

(注2)「任意売却」 略称:「任売」(にんばい)

 担保権が付いた不動産につき,法的手続(=競売)ではなく,担保権者との任意交渉で担保抹消同意を得て売却する手続。①任意交渉であるので所有者側に主導権がある,②競売より高額で売却できることが多く売却後の残債務を少なくすることができる,③引越費用を売却代金から取ることができる,などのメリットがある。

(注3)「否認権行使」

 破産管財人が,破産手続開始前にされた破産者または第三者の行為の効力を否定して破産財団の回復を図ること。破産債権者を害する行為(破産法160条)や対価を隠匿するための処分行為(同法161条)などが対象となる。

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