NO.18 破産開始決定後に判明した財産と自由財産拡張
<事案>
法人代表者につき破産管財事件(注1)として申立をしたが、破産開始決定後に財産が判明し、自由財産拡張(注2)をした事案。
<解決に至るまで>
債権者数 6社
残債務額 約1億6,800万円(会社の保証債務を含む)
判明した財産 代表者本人の医療保険 解約返戻金約70万円
<最終的な結果>
Aさんは法人代表者ですので、大阪地方裁判所の取扱では個人の破産管財事件(注1)として破産申立をする必要があります。個人の破産管財事件の場合、本来的自由財産(注2)と自由財産拡張(注3)により認められた財産を除き、破産開始決定時に存在する破産者の財産は破産財団(破産法34条)となり, 破産管財人に処分権があります(破産法78条1項)。
自由財産拡張は、破産開始決定時までにされる必要があり、開始決定後に判明した財産は、原則拡張の対象にならず、例外的に、わからなかったとがやむを得ない、と認められる場合に限ります。
判明した財産は、医療保険であり、保険料は代表者の奥さんが支払っていました。まず、代表者は、隠すつもりはまったくないが、医療保険は解約返戻金がないだろうから財産ではないと判断し、当方に申告しませんでした。次に、奥さんが保険料を支払っていたので、当方は保険料支払いが確認できず、保険料の存在を把握することができませんでした。以上の2つの障害で、医療保険の存在が開始決定前に判明せず、自由財産拡張をすることができませんでした。
判明後、すぐに破産管財人と裁判所に事情説明の報告書を提出し、医療保険につき自由財産拡張の申立をしました。裁判所と破産管財人の検討の結果、例外的に自由財産拡張が認められ、医療保険は代表者の財産とみなされ、破産管財人に処分されることはなくなりました。
その後破産手続きは問題なく進み、無事免責決定がされました。
<担当者から>
最近の医療保険は、解約返戻金なしとして、その分支払保険料を安く抑えるものがほとんどです。そのため、「医療保険は解約返戻金がない」と思われているようです。しかし、本件の医療保険は、平成元年に加入したもので、古い保険でした。そのため、医療保険でも解約返戻金がありました。
財産については、実際に調査しないと正しい価値がわからない場合が多々あります。ご自身で判断される前に、弁護士に何なりとお尋ねください。
債務整理に関する相談には、面談義務があります。
弁護士は、原則依頼者と会って話をしてから債務整理事件を受任するようにと規定で定められているのです。
よって、債務整理の相談をしたいとお考えなら、足を運びやすいお近くの事務所へ相談されることをおすすめします。
【用語説明】】
(注1)破産管財事件 (破産法31条1項) 通称「管財事件」
破産管財人が選任され破産者の財産をお金に換え債権者に配当するお金を確保する手続。法人代表者の場合、必ず破産管財事件となる。大阪地方裁判所の場合、破産管財人への引継予納金として20万5,000円の納付が必要となる。
(注2)本来的自由財産 (破産法34条3項2号)
個人において法律上差押えが禁止された財産。通常の家庭にある生活必需品をいう。具体的には、食器、衣類、テレビ、冷蔵庫などの家電など。
(注3)自由財産拡張
個人破産の場合に、破産者の経済的再生のため、破産財団に属しない財産の範囲を拡張する手続。一般的に拡張が認められるのは、預金、保険、退職金、自動車、敷金。拡張が認められると、破産管財人に処分されず、破産者の財産として保護される。
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