NO.274 債務整理 ⇒ 会社代表者の破産と自宅の任意売却(リースバック)
<事案>
会社代表者が破産申立と自宅を任意売却(リースバック)した事案。
<解決に至るまで>
債権者数 23社
残債務額 約1億7000万円(会社保証と住宅ローン残債務を含む)
財産 自宅(オーバーローン不動産),預金,保険,互助会積立金
自宅固定資産評価額:1310万円 ローン残額:1400万円
<最終的な結果>
Aさんは,代表者を務めていた会社の売上が減少したので,会社と共に破産申立をすることにしました。ただ,気かがりは,長年住み慣れた家を離れるのが難しいことでした。
破産手続は,自由財産(注1)と自由財産拡張(注2)がされた財産を除き,破産者の財産を換価して債権者に配当する手続きですので,自宅も換価の対象になります。Aさんの自宅は,オーバーローン不動産(注3)でしたが,任意売却(注4)をして家族が購入し,Aさんがその家族から賃借して住み続けることを検討しました。
しかし,会社の破産申立もする必要があり,会社の申立は従業員への未払給与支払が終わればすぐ,具体的には受任通知(注5)から2週間程度で申立をする予定でした。Aさんの破産も会社の申立と合わせる必要があり,2週間では当事務所主導でAさん自宅の任意売却をすることはできません。そこで,状況を説明する報告書と共に破産管財人(注6)に引き継ぎ,破産管財人に任意売却を任せました。
破産管財人主導で担保権者との交渉もまとまり,家族が買い受ける任意売却も完了し,Aさんは自宅に住み続けることができました。その後,破産手続も問題なく終了し,無事免責決定がされました。
現在Aさんは奥様と共に,かつての得意先で働いておられます。「ウチは無理でもAさんならできる」と言われたほどの技術を持つAさんと,会社の総務と経理を一人で支えた奥様は勤務先の大きな戦力になっているようです。
<担当者から>
本件は,任意売却を破産管財人に任せた案件です。任せるには,周到な準備と裁判所・破産管財人への説明が必要です。不動産売却の知識だけでなく,破産手続も周知している必要がありますので,知識と経験のある事務所に相談されることをお勧めします。
【用語解説】
(注1)自由財産 (破産法34条3項2号)
破産財団に帰属しない財産のこと。差押禁止財産などがあたる。破産者が管理・処分できる。
(注2)自由財産拡張
個人破産の場合に,破産者の経済的再生のため,破産財団に属しない財産の範囲を拡張する手続。一般的に拡張が認められるのは,預金,保険,退職金,自動車,敷金。拡張が認められると,破産管財人に処分されず,破産者の財産として保護される。
(注3)オーバーローン不動産
住宅ローン残債務が不動産価値を大きく上回っている状態にある不動産のこと。不動産が,下記①または②にあたる場合は,「オーバーローン不動産」として価値なしとする。
①担保付不動産の被担保債権額の残高が固定資産税評価額の2倍を超える
②上記①の割合が1.5~2.0の間の場合は,被担保債権額の残高が不動産業者の査定額の1.5賠を超える
(注4)「任意売却」 略称:「任売」(にんばい)
担保権が付いた不動産につき,法的手続(=競売)ではなく,担保権者との任意交渉で担保抹消同意を得て売却する手続。①任意交渉であるので所有者側に主導権がある,②競売より高額で売却できることが多く売却後の残債務を少なくすることができる,③引越費用を売却代金から取ることができる,などのメリットがある。
(注5)受任通知
弁護士から債権者に対し,債務者本人の代理人として債務整理手続を行うことを知らせる通知。貸金業者は,受任通知到達後,正当な理由なく本人に請求することはできなくなる(貸金業法21条9号)。
(注6)破産管財人
破産手続で,破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利を有する人(破産法2条12項)。管轄裁判所が破産管財人名簿に登録された弁護士から選任する。
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