NO.206 廃業後の破産申立



<事案>

  個人事業廃業後に破産申立をした事案。

<解決に至るまで>

債権者数   11社(事業での借入先を含む)

残債務額   約3550万円(事業での借入金を含む)

財産     借地権付き建物(市街化調整区域)

<最終的な結果> 

 個人事業をしていた際に借り入れた運転資金を廃業後も支払っていましたが,金額も大きく支払可能性がないため破産申立を希望されました。

 個人事業主が破産申立をする場合は,破産管財事件(注1)として申立をする必要がありますが,廃業から2年が経ち,アルバイトで生活されていたので同時廃止事件(注2)として申立が可能と思えました。しかし,借地権付き自宅建物が,担保が付いておらず財産となるため,破産管財事件として申立をしました。  

 自宅建物が建つ地域が,市街化調整区域(注3)と土砂災害指定区域(注4)に指定されており,建物の価値はあっても市場流通性がないことを詳細に報告しました。その結果,破産管財人は,建物を破産財団から放棄し,破産開始決定から3か月で破産事件は終了し,無事免責(注5)がされました。

<担当者から>

  ご本人は,「台風が近づくとすぐに避難指示が来る,できれば早めに引っ越したい」とのことでした。いのちだいじにです。

【用語説明】

(注1)破産管財事件 (破産法31条1項)  通称「管財事件」

 破産管財人が選任され破産者の財産をお金に換え債権者に配当するお金を確保する手続。

 大阪地方裁判所の場合,破産管財人への引継予納金として20万5000円の納付が必要となる。

(注2)同時廃止事件 (破産法216条1項) 通称「同廃事件」 破産者の

 財産が少なく,破産手続の費用の捻出ができない場合に,破産開始決定と同時に破産手続を終わらせる決定をする手続。上記引継予納金は不要であるが,裁判所の書面審査のため,原則申立時に必要資料をすべて提出し,事細かに報告する必要がある。

(注3)市街化調整区(域都市計画法第7条以下)

  都市計画法に基づく都市計画区域区分。新たに建築物を建てたり,増築したりすることを抑える地域のこと。

(注4)土砂災害指定区域

  土砂災害防止法に基づき指定される区域。土砂災害のおそれのある区域についての危険の周知,警戒避難体制の整備,住宅等の新規立地の抑制などのために指定される。

(注5)免責 (破産法248条以下)

 破産開始決定時に存在する借入金などの債務につき,支払義務を免れる手続き。個人の破産者は,免責不許可事由(破産法252条)がないか,あっても裁量免責相当とならば免責決定を受ける。



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