NO.528 不動産を任意売却後に破産申立をおこなった事例
<事案>
住宅ローン完済後に自宅を妻に贈与したのち,役員報酬減額で支払不能になるおそれがあったため,小規模個人再生(注1)を申し立てた事案。
<解決に至るまで>
債権者数 9社
残債務額 消費者金融・クレジットカード,親族からの借入 1750万円
資産 自宅土地建物(時価約650万円)
収入状況 役員報酬 月50万円
<最終的な結果>
役員報酬の改定で支払いが難しくなり,支払不能になるおそれがあったためご来所されました。住宅ローンを完済後,2年前に自宅を同居する奥さんに贈与(いわゆる「婚姻20年贈与」)をしていました。ご本人はご自宅に住み続けることを強く望んでいましたので,ご自宅を失う破産手続は取ることはできず,小規模個人再生手続による解決を図ることにしました。
問題は,ご自宅がご本人の財産とされ,最低弁済額(注2)が上昇することでした。個人再生の最低弁済額は,清算価値を上回っている必要があります。支払不能のおそれがあったのちに贈与した財産は,個人再生手続上,ご本人の財産とされます。贈与は,役員報酬改定前で支払いが難しくなった原因の前でしたが,他方,贈与時点で借入は1000万円を超えていました。
裁判所は,贈与時点の借入額及び支払状況から,奥さんの財産ではなく,本人の財産であると判断し,再生委員(注3)を選任しました。再生委員に対し,贈与当時の状況を詳細に説明しましたが,やはりご本人の財産であることを動かすことは難しい,とのことでした。
次善の策として,自宅の土地建物の価値は流通価格より低く,想定されている清算価値をかなり下回ることを丁寧に説明しました。
その結果,流通価格を下回る査定価格が採用され,査定価格を最低弁済額とする再生計画案を作成し,無事認可決定がされました。ご本人と奥さんは,当初望まれたとおりご自宅を失うことなく,認可決定により減額された債務額を分割して債権者に支払い,現在もご自宅に住み続けています。
<担当者から>
ご自宅に残す方法はいろいろあります。悩むより,まずは相談してみるのはどうでしょうか。
【用語解説】
(注1)小規模個人再生(民事再生法第13章以下)
消費者金融やクレジットの総債務額を減額した最低弁済額を原則3年で分割弁済することで,消費者金融やクレジット残額の免除を受ける手続。
(注2)最低弁済額
小規模個人再生手続で再生債権者に支払うべき金額。
①債務額の5分の1,②100万円,両者のいずれか高い方となる。なお,清算価値(=債務者の財産見込額)を上回っている必要がある。
(注3)再生委員
個人債務者再生で,履行可能性と積立,申立内容に問題がないか監督する人。
申立代理人以外の弁護士が選任される。再生委員との定期的な面談が必要になるなど,申立人は再生委員の監督を受ける。大阪地方裁判所の場合,選任には30万円以上の予納金の納付が必要。
<お客様の声>
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